今回は、生活の中で目を引かれたプラスチック製品について2つご紹介したいと思います。
ハードコンタクトレンズ
1つ目は、私が日頃からお世話になっているコンタクトレンズです。ハード派なので、こちらに焦点を当ててご紹介します。
ハードコンタクトレンズはかつて、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が使用されていました。ポリメチルメタクリレートはアクリル樹脂の一種で、一般的に「アクリル」と呼ばれています。
透明度が高い材質であるためコンタクトレンズに使われていましたが、一方で、角膜の皮膚呼吸が遮られることで酸素欠乏になり、目が疲れやすいという欠点がありました。
このような事態が改善され、ハードコンタクトレンズの素材として現在多く使用されているのは、含シリコンメタクリレート(SiMA)や含フッ素メタクリレート(FMA)です。アクリルの透明度に加え、酸素を通しやすくするためにシリコンを配合したり、汚れをつきにくくするためにフッ素を配合したりするようになったそうです。このように、機能を高めるために充填される素材を「充填材」といいます。
弊社の製品においても、プラスチックの弱点を補強するため、充填材が配合されます。軸受の摺動性や強度を上げるために使用されるほか、様々な用途によって適した充填材が使われます。例えば、PTFEにおいては、カーボンやガラスなどを充填します。充填材によって、耐摩耗性・強度・耐クリープ性・熱伝導度などを向上させるためです。ただし、種類によっては、無充填PTFEより耐薬品性が低下したり、導電性を持ってしまう場合がありますので、選定には注意が必要です。充填材の役割についてはこちらをご覧ください。
プラスチック軸受の充填材の役割
充填材の有無を比較した動画がございますので、こちらもぜひご覧ください。
ちなみに、コンタクトレンズが誕生した1890年頃はガラス製のものだったそうです。想像するだけで痛そうです。プラスチック製へと移行されたのは、1950年代なんだとか。
プラモデル
2つ目は、趣味で作る機会が多いプラモデルです。私がよく作るのはロボット型の…アレです。
正式名称は「プラスチックモデル」で、その名の通りプラスチックで作られています。主にポリスチロール(PS)、ABS樹脂が使われています。通常、プラモデルなどの玩具には主にポリスチレン(PS)やABS樹脂が使われています。成形しやすい材質であるポリスチレンに、耐薬品性改良のためにアクトロニトリルが加えられ、さらに耐衝撃性改良のために合成ゴムの主成分であるブタジエンが加えられたものが、ABS樹脂です。
ロボット型のように関節が多いプラモデルには、上記のプラスチックの他、部位と部位をくっ付けるポリキャップにポリエチレン(PE)が使われています。関節部に軟らかい部品を組み込むことで、腕や脚を様々な方向に動かし、とらせたポーズを保持させることができます。いろんなポーズをとらせて飾るのが醍醐味ですので、ポリキャップは重要な役割を果たしています。ポリエチレンには、非粘着性・自己潤滑性があり、耐摩耗性が高く、弾性が強いといった特徴があります。
ポリエチレンについての解説は、こちらをご覧ください。
PE(ポリエチレン)の特徴
ロボット型プラモデルの関節部 |
一方で、ポリキャップは関節にはめ込むためのスペースが必要になるため、細いはずの見た目がやや太くなってしまうなどの短所がありました。その問題を鑑み、最近ではポリキャップレス化のプラモデルも生産されています。可動性に問題はないのですが、あまり動かしすぎると手足がぷらぷらになってしまいます。ABS樹脂は自己潤滑性が高くない材質のため、ポリキャップの感覚に馴れている人からすると、動きの滑らかさが物足りなく感じるのではないかと思います。
弊社のベアリングでは、同材質同士の軌道輪・ボールの使用をおすすめしていません。同材質の軌道輪・ボールが擦れ合う熱によって凝着摩耗が生じるためです。
以上が、私が普段の生活の中で目を引かれたプラスチック製品のご紹介でした。
個人的に意外な使われ方をしていると思った製品をピックアップしましたが、意識をするとキリがないほど、プラスチックは私たちの周りで大活躍しています。皆さんの身の回りでも、意外なところでプラスチックが使われているかもしれません。