樹脂ベアリング(樹脂軸受)に使われる材料であるPPS(ポリフェニレンサルファイド)の特徴です。
材質にどのような特徴があるかご確認ください。
PPS(ポリフェニレンサルファイド)の概要
フェニル基(ベンゼン環)とイオウ(S)が交互に繰り返される分子構造を持った、結晶性の高性能エンジニアリング・プラスチックです。
PPSの使用例としては、コネクタやスイッチ、ブレーカーなので精密電気・電子部品、
ドライヤーや電子レンジ、テレビ部品などの家電、
ラジエーター部品、ランプ部品、スピードメーターフレーム、ブレーカーなど自動車部品、
ギヤ、パルプ、計器のハウジングや基板など機械部品、
トイレ、医療機器部品など医療関係などになります。
PPS(ポリフェニレンサルファイド)の特徴
PPSの長所は、
- 耐熱性、高温特性に優れている(ベアリングとしては180℃まで)※ガラス転移点が90℃程度なので高負荷・高温化での使用は注意が必要
- 耐摩耗性に優れる
- 機械的強度があり、特に圧縮強度が強い。
- PTFEに次ぐ耐薬品性
- 吸水性が低い(0.01%と、ほとんど水を吸わない)
- 電気絶縁性がある
- 難焼成(燃焼しても有毒物質の発生が少ない)
- 食品衛生法認可材質
特に耐薬品性に関しては、200℃以下でPPSを溶かす油脂や溶剤は無いといわれるほど強く、薬品環境で使用する際にPTFEでは強度面が心配な場合では、PPSを使えば耐荷重を上げることができます。寸法安定性があるので加工もしやすい材料です。
ただ欠点がないわけではなく、短所としては
- 衝撃に弱い(硬度があるため割れやすい)
- 耐候性が悪いので、紫外線などで変色しやすい。※耐候性 (たいこうせい)とは、プラスティックや塗料等が、屋外で使用された場合、変形、変色、劣化等の変質を起こしにくい性質をいいます。
- ドライ環境での摺動特性が悪い
などがあります。
上記の摺動特性に関しては、水中・液中では耐薬品性や吸水率の低さから非常に優れた力を発揮するのですが、ドライ環境(大気中など無潤滑での使用)では、摩耗が早くなる傾向にあるのがPPSの性質になります。ですので、ベアリングとして使用する際は主に液体に浸かっている(あるいは液体が常に介在している)状況下で使用されることが多いです。あるいはドライ環境下で使用したい場合、リテーナーを摺動特性の高い充填材入PTFEなど別の材質にする等、材質の組合せを変えてあげることで性能を上げることもできます。
PPSはPEEKやPTFEほどではないですが樹脂の中では比較的高価な部類に入る材質です。使用例にもあるように一般消費財というよりは、熱や薬品関係、絶縁が必要な場所など専門的な分野で多く採用されておりますので、特殊環境での使用が多いプラスチックベアリングでは重宝される材質です。
オススメ度
◎充分おすすめできる ○普通におすすめ △使用できるがおすすめしない ×使用不可
材質名 | 呼び 記号 |
ドライ | 不定期 水分 |
水中 |
蒸気 | 耐薬品 | 非磁性 | 絶縁 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
酸 | アルカリ | 有機溶剤 | 油 | ||||||||
フェノール | SD | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | × | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
SDK | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | × | ◎ | ◎ | × | × | |
SDHG | ◎ | △ | △ | × | ○ | × | ○ | ◎ | × | × | |
PTFE | PT | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | × |
PTG | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | × | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
PTE | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
PTN | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
UHMW | PE | ○ | ○ | ◎ | × | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
PP | PP | △ | ○ | ○ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
PEEK | PK | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
PKG | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | × | |
PPS | PS | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
PSG | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | × | |
PCTFE | PCT | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
PVDF | PV | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
カーボン | CY | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | × |
注)薬品については種類や濃度等ご相談ください。
PPS(ポリフェニレンサルファイド)の耐温度性能
オススメ度
☆最もオススメ ◎とてもオススメ ○普通にオススメ △使用できるがオススメしない ×使用不可
材質名 | 呼び記号 | 温度 | |||||||
-190℃~ | -100℃~ | -50℃~ | -20℃~ | 常温~60℃ | ~120℃ | ~200℃ | ~350℃ | ||
フェノール | SD | × | × | 〇 | ◎ | ☆ | ◎ | × | × |
SDK | × | × | 〇 | ◎ | ☆ | ◎ | × | × | |
PTFE | PT | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | ☆ | ◎ | △ | × |
PTG | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | ☆ | ◎ | △ | × | |
PTE | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | ☆ | ◎ | △ | × | |
UHMW | PE | × | △ | 〇 | 〇 | ☆ | × | × | × |
PP | PP | × | △ | 〇 | 〇 | ☆ | 〇 | × | × |
PEEK | PK | × | × | 〇 | ◎ | ☆ | ◎ | 〇 | × |
PKG | × | × | 〇 | ◎ | ☆ | ◎ | ◎ | × | |
PPS | PS | × | × | × | 〇 | ☆ | ◎ | 〇 | × |
PSG | × | × | × | 〇 | ☆ | ◎ | 〇 | × | |
PCTFE | PCT | × | × | 〇 | ◎ | ☆ | 〇 | × | × |
カーボン | CY | × | × | △ | 〇 | ☆ | ◎ | ◎ | ◎注 |
注)ベアリングの形状が変わります。