樹脂ベアリング(樹脂軸受)に使われる材料であるPP(ポリプロピレン)の特徴です。
材質にどのような特徴があるかご確認ください。
PP(ポリプロピレン)の概要
PPはポリプロピレン(polypropylene)の略号で、ポリプロピレンとはプロピレンを重合させたポリマーです。
石油から作られるプロピレンが原料で、炭素と水素からなる高分子の熱可塑性樹脂です。
原料代が安く、熱で溶融し成形性が良い材質なので、非常に多くの製品に使用される材質です。
PP(ポリプロピレン)の特徴
PPには、下記のようなメリットがあります。
- 安価
- 吸水性が極めて低い(0.02%前後)
- 軽量(比重が1以下なので水に浮きます)
- 耐薬品性が高い
- 絶縁性がある
- 食品衛生法認可材質
一方でデメリットもあります。
- 耐熱温度が低い(軸受として使用する場合の推奨最高温度70℃程度)
- 耐候性が悪い(変色しやすい)
- 摺動性能が低い
- 負荷に弱い
比重が低く、水に浮かび、薬品に強い特色があります。しかし、染色性が悪く、耐熱性も高くはありません。
軸受として使用することにおいて、摺動性能が低いのは難点ではありますが、耐薬品性は高いので、軽負荷・低速回転での薬液中などで使用されることが多いです。
PP(ポリプロピレン)の使用例
- 漂白剤・シャンプー・歯磨き粉などのボトルやキャップ
- タッパー
- バケツ
- フィルム
- 注射器のシリンジ(針ではなく筒の方)
現在プラスチックは私たちの生活の中で、とても身近で欠かせないものとなっています。
その中でPP製のものを探してみると、フィルム、袋状のものから容器など、様々な形状のPPを本当に多くの製品に使用されていることがわかります。
驚いたことに紙幣や紙おむつにも使われていて、探せば切りがありません。
また、日常用品以外でもPPは工業用としても幅広く使用されていて、薬液漕、メッキ装置や洗浄ライン、自動車の内外装や、家電製品などにも多く使用されています。
PP(ポリプロピレン)の使用環境目安
オススメ度
◎充分おすすめできる ○普通におすすめ △使用できるがおすすめしない ×使用不可
材質名 | 呼び 記号 |
ドライ | 不定期 水分 |
水中 |
蒸気 | 耐薬品 | 非磁性 | 絶縁 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
酸 | アルカリ | 有機溶剤 | 油 | ||||||||
フェノール | SD | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | × | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
SDK | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | × | ◎ | ◎ | × | × | |
SDHG | ◎ | △ | △ | × | ○ | × | ○ | ◎ | × | × | |
PTFE | PT | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | × |
PTG | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | × | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
PTE | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
PTN | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
UHMW | PE | ○ | ○ | ◎ | × | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
PP | PP | △ | ○ | ○ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
PEEK | PK | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
PKG | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | × | |
PPS | PS | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
PSG | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | × | |
PCTFE | PCT | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
PVDF | PV | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
カーボン | CY | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | × |
注)薬品については種類や濃度等ご相談ください。
PP(ポリプロピレン)の耐温度性能
オススメ度
☆最もオススメ ◎とてもオススメ ○普通にオススメ △使用できるがオススメしない ×使用不可
材質名 | 呼び記号 | 温度 | |||||||
-190℃~ | -100℃~ | -50℃~ | -20℃~ | 常温~60℃ | ~120℃ | ~200℃ | ~350℃ | ||
フェノール | SD | × | × | 〇 | ◎ | ☆ | ◎ | × | × |
SDK | × | × | 〇 | ◎ | ☆ | ◎ | × | × | |
PTFE | PT | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | ☆ | ◎ | △ | × |
PTG | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | ☆ | ◎ | △ | × | |
PTE | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | ☆ | ◎ | △ | × | |
UHMW | PE | × | △ | 〇 | 〇 | ☆ | × | × | × |
PP | PP | × | △ | 〇 | 〇 | ☆ | 〇 | × | × |
PEEK | PK | × | × | 〇 | ◎ | ☆ | ◎ | 〇 | × |
PKG | × | × | 〇 | ◎ | ☆ | ◎ | ◎ | × | |
PPS | PS | × | × | × | 〇 | ☆ | ◎ | 〇 | × |
PSG | × | × | × | 〇 | ☆ | ◎ | 〇 | × | |
PCTFE | PCT | × | × | 〇 | ◎ | ☆ | 〇 | × | × |
カーボン | CY | × | × | △ | 〇 | ☆ | ◎ | ◎ | ◎注 |
注)ベアリングの形状が変わります。
PP(ポリプロピレン)のミニ情報
PPは、いつから、どうして、たくさん身近に使われるようになったのでしょうか。
歴史的にみると、PPは国内で1962年頃に生産、使用が始まったと言われています。意外と最近(?)で驚きませんか?
世界では、1957年イタリアのモンテカチーニ社(後のモンテジソン社)が商業生産を始めました。
PPとPEの比較
PPとPEは見た目がよく似ており、ぱっと見だと非常に見分けがつきにくいです。
例えば通常のプラスチックでは、見た目で見分けがつかない場合は比重を計算して、材質の確認をするのですが、PPとPEはどちらも同じような比重の為(PE0.9~0.97 PP0.93~0.96)区別が難しいです。
特に使い古して色が変わっているものや、劣化したものは本当に見分けがつきません。
あくまで感覚的なニュアンスで言うと、PEは乳白色なのに対して、PPは半透明の乳白色程度になります。
物性もよく似ているのですが、多少の違いはあり、
・PEよりPPの方が少し耐熱性がある
・PEよりPPの方が硬度がある
・PPよりPEの方が摺動特性が高い
などが挙げられます。