樹脂ベアリング(樹脂軸受)に使われる材料であるカーボンの特徴です。
材質にどのような特徴があるかご確認ください。
カーボンの概要
日本語では「炭素」です。
カーボンは日常生活にも密接に関わっており、鉛筆の芯からダイヤモンドまで、幅広い意味合いをもつ材質です。
大元に「カーボン」という枠組みがあり、材料が作られていく過程において、結晶の発達度合いで呼び名が変わります。
「無定形炭素質(amorphous carbon)」や「黒鉛質(graphite)」、「ダイヤモンド(diamond)」と、炭素の校正のされ方によって見た目や呼び名が変わります。
木炭や煤などは無定形炭素質、鉛筆やシャープペンシルの芯は黒鉛質に分類されます。
耐薬品性、耐油性が高く、高温に非常に強い性質があります。
絶縁性能はありません。
カーボンの特徴
- 熱による膨張が非常に小さい … 金属並みの精度での加工が可能です。
- 耐熱温度が高い … 軸受として使用する場合は350℃を上限としていますが、材質自体の耐熱温度はもっともっと高いです。
- 薬液に侵されにくい … 大体の薬品への耐性があります。ただ、濃度の高い硫酸や硝酸、フッ酸は不可です。
- スベリ性能が高い … 自己潤滑性能に優れており、その性質から充填材としても使われることが多いです。
- 電気を通す … 金属程ではないですが、導電の性質を持ちます。
上記のようにカーボンには様々な特徴があり、すべりの良さと耐薬品性の高さ、耐熱温度の高さから、摺動部材としてもよく使われております.
特に充填材として使われる際には、耐摩耗性の向上を図り、そのプラスチックの性能を大きく引き上げることが出来ます。
また、あえてプラスチックに導電性をもたせるために混ぜられることもあります。
一方でカーボンには、割れやすい・欠けやすいという欠点があり、衝撃や振動があるところでは使用が難しく、切削による加工も難しい材料だと言われています。
また導電性を持つため、絶縁目的としての使用もできません。
オススメ度
◎充分おすすめできる ○普通におすすめ △使用できるがおすすめしない ×使用不可
材質名 | 呼び 記号 |
ドライ | 不定期 水分 |
水中 |
蒸気 | 耐薬品 | 非磁性 | 絶縁 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
酸 | アルカリ | 有機溶剤 | 油 | ||||||||
フェノール | SD | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | × | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
SDK | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | × | ◎ | ◎ | × | × | |
SDHG | ◎ | △ | △ | × | ○ | × | ○ | ◎ | × | × | |
PTFE | PT | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | × |
PTG | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | × | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
PTE | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
PTN | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
UHMW | PE | ○ | ○ | ◎ | × | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
PP | PP | △ | ○ | ○ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
PEEK | PK | ○ | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
PKG | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | × | |
PPS | PS | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
PSG | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | × | |
PCTFE | PCT | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
PVDF | PV | ○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
カーボン | CY | ◎ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | × |
注)薬品については種類や濃度等ご相談ください。
カーボンの耐温度性能
オススメ度
☆最もオススメ ◎とてもオススメ ○普通にオススメ △使用できるがオススメしない ×使用不可
材質名 | 呼び記号 | 温度 | |||||||
-190℃~ | -100℃~ | -50℃~ | -20℃~ | 常温~60℃ | ~120℃ | ~200℃ | ~350℃ | ||
フェノール | SD | × | × | 〇 | ◎ | ☆ | ◎ | × | × |
SDK | × | × | 〇 | ◎ | ☆ | ◎ | × | × | |
PTFE | PT | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | ☆ | ◎ | △ | × |
PTG | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | ☆ | ◎ | △ | × | |
PTE | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | ☆ | ◎ | △ | × | |
UHMW | PE | × | △ | 〇 | 〇 | ☆ | × | × | × |
PP | PP | × | △ | 〇 | 〇 | ☆ | 〇 | × | × |
PEEK | PK | × | × | 〇 | ◎ | ☆ | ◎ | 〇 | × |
PKG | × | × | 〇 | ◎ | ☆ | ◎ | ◎ | × | |
PPS | PS | × | × | × | 〇 | ☆ | ◎ | 〇 | × |
PSG | × | × | × | 〇 | ☆ | ◎ | 〇 | × | |
PCTFE | PCT | × | × | 〇 | ◎ | ☆ | 〇 | × | × |
カーボン | CY | × | × | △ | 〇 | ☆ | ◎ | ◎ | ◎注 |
注)ベアリングの形状が変わります。
カーボンに関するミニ情報
脱臭炭というものがあります。
これもカーボンの一種ですが、そのメカニズムについて。
木が蒸されて炭になる際に、ポーラス(POROUS)と呼ばれる、とっても小さな、それこそミクロンレベルの孔が無数にあきます。
これを多孔質と呼びますが、その孔に臭いの成分が吸着されることで消臭効果が得られる、というのが脱臭炭の仕組みです。
臭いだけでなく、空気中に含まれる余分な水分を吸着したり、乾燥した空気中にため込んだ水分を放出したりと、湿度を調節する機能も備えています。
雑菌の好む高温多湿環境も、炭で調節することで雑菌の繁殖を抑えることができ、それも消臭効果に繋がっています。
CFRPについて
繊維強化プラスチックと呼ばれ、端的に言うとカーボンファイバー繊維とプラスチックとを合体させたものです。
重量が軽いにも関わらず強度が非常に強いという特徴があります。
釣り竿やゴルフクラブのシャフト、自動車の車体や飛行機のボディなど、様々な分野で幅広く活躍しています。
ただカーボン以上に難削材になるため、切削加工が非常に難しい材質です。
弊社でもCFRPでのベアリングは現在のところは取り扱っておりません。