プラスチックと絶縁性
プラスチックの一つの特徴として挙げられるのが絶縁性です。
絶縁とは電気を通しにくいことを指し、絶縁性とは電気を通しにくい性質のことを表します。そして、そういった性質を持つプラスチックやゴム、ガラスなどを絶縁体と呼びます。
繰り返しになりますが、プラスチックは基本的に絶縁性があります。
私たちが生活でよくみるポリエチレンやポリプロピレン・塩ビなどの汎用プラスチックから、ナイロンやPOMなどのエンプラ、PEEK・PPS・PTFE(テフロン)などのスーパーエンプラ等の熱可塑性樹脂や、フェノールやエポキシなど熱硬化性樹脂も絶縁性を有しています。
UHMW | PEEK | フェノール樹脂 |
絶縁性のあるプラスチックベアリングの用途
弊社の軸受も絶縁特性を活かして使用されています。
例えば検査機や計測器などでは通電による周波数の乱れなどの影響を防止し、測定を安定させるためプラスチックの軸受が使われることがあります。金属探知機のすぐ傍の軸受に誤作動防止のためプラスチックの軸受が使われている例もあります。他にも医療分野では電気メスの誤作動防止のために使用されたりなど、絶縁性を求められる環境は少なくありません。
プラスチックの帯電(静電気)
ただ、その一方でプラスチックは帯電しやすいという性質も併せ持っています。
すべての物質に言えることなのですが、静電気は物と物の摩擦―こすれあうことで発生します。静電気が何故起こるのかについては原子云々あってちょっとややこしいのですが、物質は+と-両方の”電荷”というものをもっていて、物質同士が接触することによって電荷が向こうに行ったりこっちに来たりと移動するようなイメージだと思ってください。物によって+を集めやすい物質、-を集めやすい物質があります。(プラスチックは-を集めやすいようです。)このどちらかの電荷が集まっている状態を帯電と呼び、電荷が偏ったまま動かない”静”の状態なので、この状態のことを静電気と呼びます。帯電=静電気です。
この状態を解消するために物質は+と-の電荷のバランスを取ろうとします。例えば+に帯電している物質は、-に帯電している物質が近づいたとき、余分な+電荷を放出して他物質の-の電荷に結合させようとします。その結合させる瞬間に電流が流れるのですが、これを静電気の放電(バチッとなるのがこの現象)と呼びます。導体はこのように電気を移動させ帯電を解消することができるのですが、プラスチックなどの絶縁体は電気を通さない性質なので、放電することなくひたすら帯電した状態が続きます。
そして製品や機器によっては静電気そのものが問題になることもあります。製品破壊やノイズの発生、ゴミの付着から、事故や火災の原因にまでなるなど生産現場では往々にしてある問題です。その解消法として挙げられるのが、”導電”と”帯電防止”です。絶縁を売りとするプラスチックでもそれが可能となります。
導電プラスチック
先ず”導電”に関してですが、これはプラスチックを成形する前に樹脂にカーボンなどの導電性の粒子を練りこむことによって素材全体に導電性を持たせる方法があります。成形前に充填材を練りこむことで樹脂の性質と充填材の性質両方を併せ持つハイブリッドな材料を作ることができるということです。弊社では導電グレードとしてカーボングラファイト充填の材質を取り扱っております。導電プラスチックベアリングの使用目的としては、グリスを使いたくないが導電はさせたい状況などです。グリスレスだけでなく水環境や、種類に依りますが薬液かかる環境でも使えます。因みにカーボンを充填させるとおおむね見た目が黒っぽくなります。
プラスチックの帯電防止
ただ、上記のようにカーボンなどの導電性の粒子を充填させてしまうと、プラスチック本来の特性である絶縁性が失われてしまいます。そこでもう一つの解決策”帯電防止”です。
プラスチックにおける帯電防止とは、樹脂表面に導電性を持たせることにより、樹脂表面の静電気の拡散性を高め滞留を防ぐ機能のことを指します。それにより大気中―空気中の水などに静電気を放電させることができるということです。何故そのようなことができるのかというと、これは電気抵抗の違いにあります。
先ほどからずっと絶縁やら導電やら言及してきましたが、これの本質も電気抵抗です。
それぞれの電気抵抗値は、下記のとおりです。
この抵抗値が高いほど電気は蓄積し流れにくくなり、反対に抵抗値が低いほど電気が流れやすくなります。あるいは「電荷が動きやすいか動きにくいかの違い」といった方がわかりやすいかもしれません。
話を戻しますが、帯電防止とはこの電気抵抗を絶縁性よりは下げ、且つ導電しない程度に留めた物性のことを指します。電気抵抗を多少下げることによって表面のみ電気の放出が可能となり空気中へ放電できるようになる一方で、物質自体は電気を通すには抵抗値が高いので導電しない、これが帯電防止グレードです。
弊社では、この帯電防止グレードの材料を使うことで、帯電防止ベアリングを製作・ご提供しており、納品実績もございます。
以上、プラスチックの電気的特性についてご紹介しました。絶縁、帯電防止、導電についての違いと特徴をご理解いただけたかと思います。
鹿島化学金属では使用環境に応じたプラスチック製品をご提案致します。何かお困りのことがございましたら、いつでも何でもご相談ください。