みなさんこんにちは、鹿島化学金属㈱です。
今回は、樹脂ベアリングに使用されるボールについて、材質や特徴・選定基準などを交えながらご紹介したいと思います。
ボール材質について
樹脂ベアリングに使用するボールは、基本的にはこの3種になります。
樹脂ベアリングには、樹脂のボールを使うのではというイメージがあるかとは思いますが、
基本的には「ステンレス」「ガラス」「セラミック」の3種を使用します。
樹脂ボールを使用しない理由は、後ほどご説明します。
次にこの3種類のボールの使い分け、選定基準をご説明します。
選定の基準について
選定の基準は”使用環境”で判断します。
樹脂ベアリングは、金属ベアリングを使用できない(使用したくない)特殊な環境で使用されることが主となりますので、当然ボールも特殊な環境で使用できるものに限られます。
ステンレスボール(SUS304)
ステンレスボールの特徴は上記の通りです。
安価であり、ドライ環境はもちろん水環境でも錆びることはありません。
ただ耐薬品性は低く、薬品の種類によっては使用できないこともあります。
ステンレスですので絶縁性はありませんが、導電グレードの材質と組合せることで通電をはかることもできます。
SUS304の他に、SUS316ボールも取り扱っております。
ガラスボール(ソーダガラス)
比較的安価なボールであり、ドライ・水環境では 問題なく使用できます。
薬品にもよりますが、多少の耐薬性はあります。
但しアルカリ性に弱いという性質があります。
急な温度変化がある環境での使用は非推奨です。ヒートショックによって割れてしまうことがあります。
絶縁目的でも使用できますので、通電を嫌う環境などに適しています。
セラミックボール
セラミックボールは耐薬品性に優れ、ドライ・水・薬品など環境を問わず使用できます。
絶縁性や耐熱性にも優れており、特殊環境下では特に活躍します。
価格はセラミックの材質にも寄りますが、ステンレスやガラスに比べると少々高くなります。
弊社では4種のセラミックボールを取り扱っており、使用される薬品によって使い分けております。
その4種類は次の通りです。
アルミナセラミック
4種の中でも比較的安価で耐薬品性も高く、弊社もメインのセラミックボールとして使用しています。
ジルコニアセラミック
耐薬品性も十分にあり耐摩耗性に優れているので、軌道輪で使用されることも多いです。
鹿島化学金属製のセラミックベアリングも、軌道輪にジルコニアセラミックを使用しております。
また、この中では一番比重が重かったり、高温下では絶縁性が失われる可能性があるなどの特徴があります。
窒化珪素
靭性に優れ高温特性も良好のとても硬いセラミックです。
耐薬品性は高いので、アルミナやジルコニアでは耐性がない薬品下で使用します。
炭化珪素
使用頻度はかなり少なくほとんど使用されないボールなのですが、この炭化珪素は「フッ酸(フッ化水素酸)」という劇薬への耐性があり、フッ酸環境下では非常に活躍します。
セラミックだけでなく、樹脂もフッ酸への耐性があるものはPCTFE(3フッ化)ぐらいなので、フッ酸環境下では「PCTFE+炭化珪素ボール」の組合せを推奨しております。
樹脂ベアリングに使用されるボールの種類や選定の基準、それぞれの特性についてご理解頂けたかと思います。
ざっくりですがまとめたものがこちらです。選定の目安にしていただければと思います。
薬品については、この薬液に耐性のあるボールはどれだろうと判断が難しいかと思われますので、お気軽にお問合せください。
薬液への耐性テストがしたいという場合も、ボールの提供は可能ですので、こちらもお問合せください。
また、中には樹脂のボールを使用したいという方もおられるとは思います。
ですが、基本的に樹脂ベアリングに樹脂ボールはNGです。
樹脂ボールは柔らかいので変形の恐れがあります。ボールが変形してしまうと回転不良の原因に繋がるからです。
また、軌道輪とボールが同材質同士の場合「凝着摩耗」という異常摩耗を引き起こす可能性もあるからです。
樹脂ベアリングに樹脂ボールを使用しない理由については別記事にて紹介しております。よろしければこちらのリンクからご覧ください。
また、どうしても樹脂ボールを使用したいという場合は、一度ご相談ください。
その他、チタン・ハステロイ・タングステンなどのボールも取り扱っております
耐薬品性の面で、あるいは客先指定などが主ですが、使用頻度はあまり高くありません。
サイズによっては製作不可のものや納期がかかるものもありますので、使用検討の際は一度ご相談ください。
以上、樹脂ベアリングに使用するボールのご紹介でした。