現在、弊社で取り扱っているボールは以下の通りです。
- セラミックボール(アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、炭化珪素)
- ステンレスボール(SUS304、SUS316)
- ソーダガラスボール
- プラスチックボール
- その他ボール(タングステンカーバイド、ハステロイ、チタン等)
樹脂ベアリングと言われると、外内輪・リテーナーが樹脂素材、ボールも樹脂ボールという組合せをイメージされる方が多いのではと思います。
ですが実際は、外内輪・リテーナーが樹脂素材、ボールはセラミックやステンレス、ガラスなど樹脂よりも硬い材質を使うことが一般的です。
樹脂ベアリングに樹脂ボールの使用は基本的にはNGで、弊社でも非推奨としております。
今回は、樹脂のボールがなぜ使用NGか、推奨していないのかについて説明いたします。
理由①:凝着摩耗
凝着摩耗とは、ベアリングが回転することによって生じる摺動熱の影響で、ベアリング本体とボールがくっついたり離れたりを繰り返し、かえって摩耗を早めてしまう現象のことです。
凝着摩耗が起こるケースとしては、軌道輪とボールが同材質同士の時に生じます。
下図に凝着摩耗について簡単にまとめています。
かなり極端に表しておりますが、このように外内輪とボールを同材質にしてしまうと、外内輪とボールが双方に結合しようとするも、摺動によって離される、ということを繰り返してしまうためくっついては離されを繰り返すうちに表面がだんだんと歪になっていき、結果的に寿命を短くさせてしまうおそれがあります。
例えばUHMWPEの外内輪にUHMWPEボールの組合せや、PEEK外内輪にPEEKボールを使用すると、このような現象が起こってしまいます。
同材質同士の組合せのベアリングは基本的にはNGなので、必ず異材質を使用してくださいと説明するのはこれが要因となります。
これが樹脂ボールをおススメしない理由の1つです。
理由②:変形と擦り減り
樹脂自体が柔らかい材質なので、あまり負荷がかかるとボール自体が変形してしまいます。
ボールが変形してしまうと安定した回転ができなくなってしまい、ベアリングとしての機能を果たすことができません。
一度変形したボールは元に戻ることもありません。
また摺動によってボール自体が擦り減ってしまうこともあります。
ボールが擦り減ってだんだん径が小さくなると、外内輪との間に隙間ができてしまい、回転時にガタガタになってしまいます。最悪の場合は落球も考えられます。
特にフェノールなど硬い材質の外内輪に柔らかい樹脂ボールなどの組合せは、確実に壊れてしまいます。
セラミックやステンレスなど比較的硬度のある材質(樹脂に比べて)であれば、変形や摩耗は起きることはほとんど無いのですが、樹脂ボールになると本来起きるはずのない回転不良が起き、ベアリングとして使用できなくなってしまいます。
以上のように、樹脂ボールが何故使用できないのかについてご理解いただけたかと思います。それでも樹脂ボールしか使用できない場合は、超低負荷・超低速の液中などで使用するようにしてください。ドライ環境での使用は熱がこもりやすくなってしまうので、回転不良に繋がることが頻繁にあります。
ステンレスボールと樹脂ボールを比較した実験動画
ステンレスボールと樹脂ボールを比較した実験動画がありますので、よろしければぜひご覧ください。
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