みなさんこんにちは、鹿島化学金属㈱です。
今回紹介するのは、深溝ベアリングです。
ラジアルベアリングとも呼ばれ、ベアリングの中で最も代表的な形状です。
構成は「外輪」「内輪」「ボール」「リテーナー(保持器)」の4つのパーツから成り立っています。
ベアリングといえば金属製が主流なのですが、弊社では樹脂製のベアリングを製造しております
樹脂ベアリングとはどういうものなのか。
樹脂ならではの特徴や材質による違い、形状・組合せについても交えながらご紹介しようと思います
まずは 特徴からご覧ください。
油やオイル無しで使用可能(無潤滑)
樹脂ベアリングの大きな特徴の1つは、グリスやオイルを全く必要としないことです
プラスチックは、素材自身の摩擦係数が極めて小さいという「自己潤滑性」という特性を持っているので、
グリスやオイルが無い無潤滑状態でも使用できます。
その特性から、注油などの定期的なメンテナンスが不要になることや、
グリスやオイルを使用したくない、あるいは使用出来ない環境でも使えるベアリングです。
錆びない(耐水性)・腐食しない(耐薬品)
樹脂ベアリングは、プラスチックの特性から水や薬液に強いという特徴があります。
間欠的に水や薬液がかかる環境や、完全な液中の環境、蒸気環境でも使用出来ます。
薬液に浸して24時間後の金属ベアリング、樹脂ベアリングの比較 |
金属ベアリング
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食塩水 | 酸系洗浄剤 | アルカリ系洗浄剤 | |
樹脂ベアリング
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こちらは、金属ベアリングと樹脂ベアリングを塩水・薬液に浸した実験の様子です。
上が金属ベアリング、下が樹脂ベアリングです。
写真は浸してか24時間後の様子ですが、違いがはっきり見て取れると思います
また、水や薬液は潤滑剤代わりになってくれたり、摺動時の熱を逃したりしてくれるので、
ドライ環境で使用するよりも、液中の方が長寿命で使用出来ます。
磁性を持たない(非磁性)
樹脂ベアリングは、その特性から磁性を持ちません。
金属探知機など磁力による反応を防ぎたい場合、あるいはMRIなどの精密機器での誤作動や事故を防止したい場合、樹脂ベアリングが活躍します。
電気を通さない(絶縁性)
樹脂ベアリングの最後の特徴として、電気を通さない=絶縁性があることです。
検査機や計測機器など通電を嫌うような環境、あるいは電解メッキラインなどでベアリング自体へのメッキを防ぎたい場合、樹脂ベアリングの絶縁性が力を発揮します。
一部材質によっては、導電性や帯電防止の性質を持ったものもございます。
取扱材質について
弊社では多種多様な材料を使用し、樹脂ベアリングの製作を行っております。
材質によってそれぞれ特徴が異なるので、使用環境に合せて使える材質を選定します
ちなみに、PCTFEとはフッ素樹脂のことで、3フッ化などと呼ばれたりします。
この PCTFEの軌道輪に炭化珪素セラミックボールの組合せは、強力な薬液「フッ酸(フッ化水素)」環境でも使用できます。
その他、PVDF、PET、POM、MCナイロン、PBT、ポリイミド、ポリアミドイミドなど、他社で取り扱っていないような樹脂材質でもベアリングの製作は可能です。
形状について
深溝ベアリングの基本形状は、左側の「片側シールド型」になります。また、指定形状として中央の「両シールド型」、右側の「フランジ形状」があります。
ちなみに、両シールド型にはシール性能はありませんのでご注意ください。
また、弊社製品は全て“切削加工”にて製作しています。
通常型番はもちろん、規格にない寸法の製作や外径への溝加工、R加工など、オーダーメイドでの製作が可能です。
切削加工は金型を必要としませんので、最低ロット1個からご提供できます。
以上、深溝ベアリングについてのご紹介でした。
今回は深溝ベアリングに焦点をあててご紹介しましたが、アンギュラやミニチュア、自動調心、スラストベアリングなど、
他の樹脂ベアリングにおいても同様の特徴を持ち、同様の材質が使用でき、同様に自由な形状で製作できます。
最後に樹脂ベアリングでよく質問される事項についてQ&Aという形でまとめてみましたのでご紹介します。
よくある質問 Q&A
Q:金属ベアリングと比べて 荷重や回転数の差はありますか?
A:あります。
一般的に樹脂ベアリングにおける許容荷重・許容回転数は金属ベアリングの3~10%程になります。
但し、液体が介在する環境や完全液中などになると許容値以上の性能が見込めます。
また、計算値については、樹脂ベアリングは確立された式が無いため、弊社独自の実験データに基づく数値を基準としております。
Q:金属ベアリングより価格は下がりますか?
A:イニシャルコストは上がりますが、トータルコストは下がります。
基本的に樹脂ベアリングは、金属ベアリングが錆びたりや腐食してしまい、短期間で頻繁に交換している環境で、使用されることが多いです。
樹脂ベアリングを使用することで、長寿命化し交換回数が減ることや、グリスレスの特性から定期メンテナンスが不要になり、結果、ランニングコストや手間の削減に繋がります。
Q:寿命はどのくらいですか?
A:一概には測定できません。
荷重や回転数同様、確立された式がないことや、材質や使用環境によって大きく変わるので、一概には言えません。
ですが、金属ベアリングが使用できない、あるいは頻繫に交換している環境で代わりに使用するので、通常は寿命は延びます。
Q:どういった場所で使用されていますか?
A:水や薬品環境、高温、低温、グリス不可環境、強磁界、要絶縁環境など。
樹脂ベアリングは、水がかかって錆びてしまう所、薬品で腐食してしまう所、高温や低温、クリーンルームなどグリスが使用できない(使用したくない)環境、磁性体・導電体が使用できない環境などで、使用されています。
主に金属ベアリングでは使用できない特殊な環境で、力を発揮します。
Q:材質によって何が違いますか?
A:許容荷重、許容回転数、耐熱温度です。
材質によってそれぞれスペックが異なります。
負荷に強い樹脂、摩耗しにくい樹脂、耐熱温度が高い樹脂、耐薬品性が高い樹脂、液中で高性能になる樹脂など、それぞれ違った特性をもっています。
使用する環境に応じて使い分けます。
Q:ボールの材質は何がありますか?
A:ステンレス、ガラス、セラミックなど。
特殊な環境で使用されることが多いため、ボールも使い分けをします。
例えば水やドライ環境であれば、一番安価なステンレスボール、強い薬液などがかかる環境であれば、セラミックボールを使用するなどです。
樹脂製ボールは、回転不良の原因になることが多いので基本的には使用しません。
Q:製作可能な公差はどれぐらいですか?
A:100分代(0.01~)での公差になります。
樹脂は熱や吸水の影響を受けやすく、寸法変化しやすいので、1000分台(0.001~)など、金属程の精度での加工は不可になります。
ボールベアリングに関しては、上記変化を考慮して内部隙間を持たせていますが、材質や使用環境によっては、多少小さくすることもできます。
Q:納期はどれぐらいですか?
A:受注後3週間を基本としています。
弊社製品は全て、受注生産品になります。
樹脂は、温度によって寸法が変化しやすいので、在庫として長く置いてしまうと、出荷時に寸法が外れてしまっていることが多々あるので、基本的には受注後の製作としております。
工場の稼働状況によっては短縮も可能ですので、都度お問合せください。
Q:金属と樹脂 どちらを使うのがいいのですか?
A:使用環境で使い分けてください。
金属ベアリングが使用できる環境では、金属ベアリングを使用してください。
それでも、錆び・腐食・グリス漏れなど、金属ベアリングを使っていて困っていたり不具合が生じるようであれば、樹脂ベアリングの使用を検討してください。
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