プラスチックの材質の一つにPTFEという材質があります。一般的には「テフロン」と呼ばれているプラスチックです。
身近なもので言うと、フライパンのコーティング。新品のフライパンの表面を指でなぞると、ぬるぬるとした感触があると思います。それがPTFEです。
PTFEは耐薬品性が高く、摩擦が小さい(滑りが良い)という特徴があります。
フライパンに使われるもの上記の特性から、調味料や洗剤にも侵されない点や、焦げ付きにくくなる点から採用されているという訳です。
この特性を利用し、PTFEは産業分野のあらゆるところで活躍しています。
もちろんベアリングもそのひとつです。
ただ弊社のベアリングでは、通常のPTFEではなく、”充填材”を含んだPTFEを使用しております。
通常のPTFEと充填材入のPTFEはどう違うのか。それぞれのメリット・デメリットは何か。何故ベアリングでは通常のPTFEではなく充填材入PTFEを使うのか。
その理由をこちらの動画にまとめましたので、ぜひご覧ください。
製品動画一覧はこちら
以下、動画の内容です。
今回は PTFEの”充填材”についての ご説明です。
PTFEとは ポリテトラフルオロエチレンの略称でフッ素樹脂の1つです。
デュポン社の商標「テフロン」とも 呼ばれています。こちらの方が馴染みがあるかもしれません。
表題に PTFEに充填材は 必要か不要かとありますが、
正解としては「ベアリングとして使用するならば 充填材は必要」になります。
これは 機械部品として使用する際のPTFEの物性が大きく関わるからです。
充填剤を入れることで 何が変わるのか、メリット・デメリットを含めてご説明します。
充填材を入れることで 改良できる点の1つとして「耐摩耗性」が 抜群に向上するということです。
耐摩耗性とは 言い換えれば “摩耗のしにくさ” のことです。
無充填のPTFEの摩耗を 1とすると、充填材を入れた場合、およそ1/1000に減らすことができます。
ベアリングは摺動部材ですので、必ず摩耗が生じるのですが、
PTFEに充填材を入れることによって、その摩耗量を 約1/1000に抑えらえれるという点、これが 大きな1つの改良点になります
その他には「剛性」「圧縮強さ」「耐クリープ性」が 強化されたり、「熱線膨張係数」が低くなるので、寸法変化が抑えられるなどの特徴があります
一方で 充填材を入れることの デメリットもあります。
PTFEは耐薬品性に非常に優れる材質ですが、充填材を入れることで 耐薬品性が低下する恐れがあります。
充填材として使用される種類としては、「カーボングラファイト」「グラスファイバー」「第二酸化鉄」「芳香族ポリエステル」などがあるのですが、
それらの充填材が薬品に反応してしまうので、無充填だと使えていた環境でも使えなくなるケースもあります。
また、基本的に絶縁性を持つPTFEですが、
カーボングラファイトなど、通電性のある充填材は絶縁性を損なってしまったり、電子機器に影響を与えたりしてしまう可能性があります。
こちらは無充填と充填材入、それぞれの特徴を表であらわしたものです。
無充填を基準とした場合に、どれだけの変化があるかを表しました。
摩耗係数は前述したように 約1/1000 まで抑えられるので、摩耗しにくくなります。
クリープとは、端的に言うと変形のことです。耐クリープ性が上がれば変形しにくくなります。
曲げ弾性率、硬さについても、充填材を入れることで向上します。
熱伝導度は、熱の伝わりやすさです。熱が伝わりにくいと熱がこもってしまいます。
樹脂は熱に弱いので、できるだけ熱を逃せるよう、熱伝導度は高い方が望まれます。
耐薬品性、絶縁性についても、前述のとおりです。
充填材の種類や充填量によって多少左右しますが、大方はこのような数値となります。
耐薬品性では劣るという点もありますが、それを補うほどの優れた点が多いのも事実です。
これら耐摩耗性や圧縮特性などは、一般用品においては そこまで重要視されませんが、機械部品として使用する場合は重視される項目です。
特にベアリングのような摺動部品では、荷重がかかると変形が大きくなってしまったり、摩耗が激しいと長期での使用が難しくなるなどの問題が出てきます。
とはいえ、実際に摩耗がどれぐらい違うのか、なかなかイメージし辛いかと思いますので、
弊社の試験機による実験映像で、摩耗の違いについてご覧いただければと思います。
(動画 3:08~)
以上が、PTFEの充填材についての説明になります。
充填材の役割について ご理解頂けたかと思います。
今回はベアリングに焦点を当ててご説明しましたが、すべり軸受(ブッシュ)も同じ摺動部材ですので、同じことが言えます。